女神と月とベリーダンス
この記事ではベリーダンスの少しスピリチュアルな側面をお話します。
ベリーダンスの奥行きをもっと深く感じられるかもしれません。l
世界で最も古い踊りと言われるベリーダンス。
その起源ははっきりしていませんが、
紀元前のシュメール王朝、古代エジプト、古代ギリシアなどの彫刻に
女性の踊り子の姿が描かれ、
それがこのダンスの原型ではないかと考えられています。
いずれにせよ、古くから女性たちによって踊り継がれてきた踊りは、
「生命」「子孫繁栄」「大地の豊穣」と密接に関わりあっています。
この世界は今でこそ、男性が何かと優位な状況ですが、古代世界では多くの
文化圏で、逆に女性たちが社会の中で中心的な立場をとっていました。
それは母系制と言われ、財産や家を女性が受け継ぐシステムでした。
なぜなら、人間の営みにおいて最も大切なのは、子孫を繁栄させること、
その要である「出産する能力」を持っていたのは女性だったからです。
そして女性の出産する力、豊穣のエネルギーを現した
「女神」が世界中で信仰されてきました。
ベリーダンス発祥の地といわれている、古代の中近東〜地中海沿岸は、
特に女神信仰が盛んな地でした。
ざっとあげてみると
愛と美、戦いの女神、イナンナ(シュメール)
生命や権力を司る、イシス(エジプト)
愛と美の女神、アフロディテ(ギリシャ)
処女神、アルテミス(ギリシャ)
などなど・・・
古代にはこうした女神たちを祀る神殿が各地に建立され、
女性神官や巫女たちが儀式の際に踊っていた踊り・・・それはきっと
女性の豊穣力=産む力を表現したベリーダンスのような踊りだったのではないか。
はっきりとした史実は残っていないものの、
きっとそのような踊りであっただろう・・・
「産む力」を現す、お腹や臀部を強調した動き。
また生命のエネルギーのシンボルである「蛇」を模した、
滑らかで曲線的な動き・・・
それはベリーダンスに魅了された女性たちの想像力を掻き立ててきました。
事実、ベリーダンスは欧米に紹介された時に、こうした歴史的な背景と、
当時のニューエイジやウーマンリブカルチャーの流れとともに
女性性を解放していくダンスとして注目を浴びました。
女性の豊穣なエネルギーを体現する多くの女神たち・・・
それはベリーダンスを守護する存在として、切っても切り離せません。
また、古代社会では現在の太陽暦ではなく、月の運行に基づいた
太陰暦が使用されてきました。
月は女性性のシンボルでもあり、月を司る神々の多くは女性です。
月経や出産など月の満ち欠けに影響を受ける
女性の心と身体には、月はとても身近な存在です。
月の運行を意識して生活する・・・
この数年でずいぶん定着してきましたが、
太陰暦を現在も使っている社会では当たり前のこと。
(インドではお祭りなどは満月や新月のタイミングで行われます。)
実際、月の運行を感じながら生活していくと、
いつの間にかそのサイクルが
当たり前のように身体に組み込まれていきます。
狙ったつもりでなくても、大きな節目が満月や新月に絡んでいたり。
女神や月のエネルギーを感じながら、ベリーダンスを踊っていく・・・
決して一般的ではありませんが、
こうしたベリーダンスのスピリチュアルなエッセンスを
より深く感じられるレッスンを行っているスタジオも、いくつかあります。
ダンスを踊るということは、私たちの身体と親密になることであり、
それは身体を通して、その周りに広がる、世界や宇宙へ
より繊細に開いていくことでもあります。
時には、振り付けを忘れて
お気に入りの女神や月のエネルギーを感じながら、自由に踊ってみませんか?
その時、幾千年もの長い時の中で、愛されてきた女神たち、
この踊りを愛し、踊り続けてきた女性たちと、
時空を越えて出会い、繋がることができるかもしれません。