ベリーダンス音楽の楽器 





ベリーダンス音楽で使用される楽器は、主にアラブ〜トルコ音楽の伝統楽器です。
日本ではまだ馴染みの薄い楽器ばかりですが、
それぞれの楽器のバックグラウンドと音色を頭に入れておくと
中近東音楽の独特の響きがぐっと身近に感じられ、理解も深まります♪



 ダルブッカ 

ゴブレット形太鼓の一種。
アラブ〜トルコ音楽の代表的打楽器。
クラシックから、ポップス、ダンス音楽と幅広いジャンルで用いられます。
左右の手で鼓面の中央と縁を打ち分けて、素手でたたき出される
切れの良い、中近東独特のノリとリズムは、べリーダンス音楽には欠かせません。

特に「ドラムソロ」と呼ばれるダルブッカとダンサーの掛け合いは、
ベリーダンスショーでの最も大きな見所のひとつです。
アラブ音楽のリズムを覚えるために習っているダンサーも多い。


 ウード 

「楽器の女王」とも呼ばれる、中近東を代表するリュート型の弦楽器。
アラブ世界〜北アフリカ〜トルコ〜イランで演奏され、
リュートや琵琶の親戚と言われますが、フレットを持たないのが特徴です。
それによって細やかな微分音や、中近東音楽特有の
情緒あるこぶし回しを表現します。
繊細に震えるように爪弾かれる、哀愁溢れる音色・・・

最近では中近東音楽独特の、微分音の奏法をジャズに持ち込んだ
ウード・ジャズが世界的に注目を集めています。


 カーヌーン 

アラブ〜トルコ音楽で代表的に使われる、チターの一種の撥弦楽器。
ハープシコードの原型とも言われます。
台形の共鳴箱に78本の弦を張ったもので、琴のように爪弾いて演奏されます。
古典音楽では、タクシーム(即興部分)を演奏し、旋律の主要な音を強調しながら、
トレモロ奏法を主体に演奏します。めまぐるしく指を動かしながら、
高音でダイナミックな旋律を奏でます。

トルコではジプシーが演奏するベリーダンス音楽にもよく用いられます。
小刻みに震える、ドラマティックな音色は、フロアワークのシーンなどにぴったりです。



 ナイ(ネイ)

イラン、トルコ〜アラブ世界で広く普及する無リードの葦笛。
アラブ世界ではナイ、トルコではネイと呼ばれます。
同じ葦笛ですが、構造や音楽や表現方法には違いがあります。
循環奏法で音が途切れないように演奏し、
音色は美しく、神秘的で、呼吸がそのまま音楽になっていくような
掠れた味わいが特徴的です。 

アラブ古典音楽ではウード、カーヌーンと合わせて演奏され、
クラシカルな楽器としての位置づけです。
トルコではイスラム神秘主義(スーフィー)音楽には不可欠の
精神性の高い楽器として愛されています。



 ヴァイオリン 

中近東音楽で用いられるヴァイオリンは、楽器そのものは西洋のもの
と同じです。歴史的には、アラブの弓奏楽器ラバーブがアンダルシア
経由でヨーロッパに伝わってヴァイオリンになったと言われています。
それが近代において、逆輸入されて、古典楽器の合奏ではヴァイオリンは
なくてはならない存在です。

フレットや鍵盤がないことから、中近東音楽特有の微分音やこぶし回し
を表現することができ、アラブ歌謡の伴奏の中心になっています。





 レク 

アラブタンバリン。リック、リク、ラクなどとも呼ばれます。
打楽器の中では主に古典音楽に用いられます。
中規模の古典アンサンブルなどでは、たった一人のレク奏者が
打楽器部門を受け持つこともあります。
小さいシンバル部分の繊細な扱いを交えつつ、複雑なリズムをたたき出します。


 ベンディール 

中近東の伝統的なフレームドラム(片面太鼓)
ベンティール、アルバニ、デフなど様々な名前で呼ばれています。
フレームドラムは世界最古の太鼓と言われて、女神信仰ともかかわりが深く
女性が演奏する古代の絵画が多く残されています。

叩いたり、こすったり、振ったり、様々な奏法で多彩な音を出すことができます。
音色は低音で、トランシーです。

皮と木枠のみのシンプルな構造ですが、
モロッコのベンディールには、打面の裏に共鳴弦が、
イランのダフは金属の輪が張られ、味わいあるノイズを作り出します。




 サズ 

長いネックを持つリュート属の撥弦楽器。
トルコ、イラン、アゼルバイジャン、バルカン半島に分布します。
アラブ音楽では使用しませんが、トルコではアシュクと呼ばれる
吟遊詩人の楽器として、民謡になくてはならない国民的な楽器です。

トルコは60-70年代に、アナドル・ロックと呼ばれるサイケデリック・ロックが
隆盛し、サズの音色がサイケデリックな旋律と親和性が高かったことから、
ポピュラー音楽の場でも好まれてきました。
現代ではオルタナティブなサイケロックバンド、ババズーラが
サズを効果的に使っています。